第三章 器

焼き物の中の小宇宙

本との出会いは、人との出会いのようにどこか宿命的なものがあるような気がする。

若き日に出会った本。今出会う本。一人の人間を遥か高みに誘い込んでくれる本。

時々そんなことを思いながら古ぼけた一冊の本を手に取ってみると、思いがけず一本の線につながっていたことに気づき、自分の探しているものが少しだけ輪郭を現してきたような錯覚に陥ることがある。

読むことも書くことも循環する。まるで年輪のように。循環を繰り返しながら、自分の内面に昔よりは根付かせ、誰でもない自分自身の人生を創り続けているのだと思う。

大徳寺の僧侶の方々や焼き物好きの山岳部の先輩の影響で、私も少しずつ焼き物に惹かれるようになった。駸々堂でアルバイトをしていたので、本は店長の好意で社員価格で購入できた。

店長はとても綺麗好きな人で、埃が大嫌いな人だった。時々、「ハッチ!」なんて叱られながら本を整頓していた時、何気なく一冊の本を手に取ったことがあった。平凡社の『陶磁大系(志野・黄瀬戸・瀬戸黒)』。そして一枚のページのカラー写真のとりこになってしまい、本を購入した。