四、終われば必ずチェックせよ 祖父より

祖父は、若い頃、ラジオ店を経営していた。定時制高校2年生のある日曜日。祖父が話しかけてきた。

「正夫。これからはな、将来のために技術を身に付けておかないといけない時代になっていくと思う」と助言してきた。

「実はな、わしが昔やっていた真空管ラジオ(並4ラジオと呼ばれた)の組み立て技術をお前に教えておきたいと思っているが、お前、興味あるかな?」と打診された。

「おじいちゃん。ボク。ラジオにとても興味を持ってるねん。是非、教えて」とお願いした。その時、祖父は、既にメモ書きしたラジオ組み立ての部品明細書を用意をしていた。

「これを持って京都寺町街のラジオ部品店に行き部品を買ってきなさい」とお金を渡してくれた。直ぐに自転車に乗って部品を買いに行った。

部品を揃えて自宅に戻ると、祖父が手書きした配線図を私に見せた。

「この記号がコイルや。現物はこれや。コイルには一次側と二次側がある。プラス側とマイナス(アース)側があるんや。正夫。分かるか?」と一つ一つ部品と配線記号とを見比べながら丁寧に教えてくれた。

バリコン、音量ボリューム、抵抗、コンデンサー、4本の真空管、電源トランス、電源スイッチ、アルミ製の筐体等々のそれぞれの役割や働きを学校の先生みたいに教えてくれた。

その後、学校から帰ると、毎日祖父の指導でラジオの組み立てに没頭した。組み立てを始めてから次第に出来上がっていく過程がとても楽しくて夢中にさせてくれた。約1ヶ月位かかってやっと組み立てが終わった。

嬉しさの余り「おじいちゃん。出来た。電源スイッチを入れていい」と言うと、祖父が「待ちなさい。配線図通り正しく組み立てられたかどうかチェックしてからや」と叱られた。

「何事もどんなことでも、どんな場合でも完成したら、それで良しとせず間違いがないかどうかを必ず確認する癖をつけておきなさい」と教えられた。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『180度生き方を変えてくれた言葉』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。