お店の中に入ると、すでに待ち合わせている二人連れが出迎えてくれた。
「美貴~。元気?」
進藤厚子だ。一緒に座っているのは旦那だろうか。
「厚子も相変わらず元気そうで良かった」
「この前の同窓会ではあんまり話せなかったからね。君と美貴が付き合ってると聞いた時はびっくりしたんだけど、どうやらその様子では心配ご無用ね」
「うふふ。分かる?」
「え~っと、話が見えないんだけど。まず、隣に座っている方は旦那さん?」
「ご挨拶遅れました。厚子の夫で名前は純一と言います。今日はよろしくお願いします」
「え? よろしくって? ん? まだ事情が」
「厚子を呼んだのは、友人として相談に乗ってもらおうと思って来てもらったの」
美貴と厚子は旧知の仲だ。生徒会長を任されていた厚子には多くの『支持者』がいた。美貴と厚子は、幼稚園の時に美貴が引っ越してきてから関係が続いている。
「厚子~。聞いてよ。私たち付き合って二か月経つんだけど、今後どうしたらいいか悩んでて。お父さんも渋ってるし。良いアドバイスがあれば教えて」
「良いアドバイス? う~ん。あなた何かある?」
「私たちも結婚してまだ五年ですからね~。美貴さんは一度失敗しているだけに慎重にならないと。もう少しお互いのことを理解しないと、兆しが見えてこないんじゃないんですか?」
「そうねえ。まだ悩んでてもいい時期じゃない?」
「そう?」
「そうだよ。君もそう思うでしょ?」
「そうだな。俺もそう思う」
俺は頷いた。
「よし。今日は美味しいご飯とステーキを食べて、おしゃれなカクテルを飲んで、楽しい会話をして過ごさない?」
「分かった。久しぶりにこうして会うんだもん。そうだよね。飲も飲も」
結局答えは出なかったが、彼女と厚子が楽しそうにしていただけで日頃の疲れが癒えた。