【前回の記事を読む】突然現れて戦闘…「なぜ市役所勤めで大人しいお父さんが?」

与えられたミッション

恭子は施設の一室に座っていた。

ただ呆然と。

しかし時が経つにつれ、罪悪感が襲ってきた。

父は私のせいで死んだ。

私は人を不幸にするしか出来ない。

人の命を奪い。

周りの人間を不幸にし。

私は。

私は生まれてきてはいけなかった。

恭子の頬を涙が伝った。

そして(うつむ)き、後悔の涙を流し続けた。

恵比寿顔が隣に座ったが、気づかぬふりをした。

「―ヨーダ……。いえ、貴女のお父さんは、凄い人でした。戦闘などと無関係な一般人だったのに、貴女のお母さんと結婚するために努力して……短期間であそこまで戦闘能力を身につけたのですから。あんな戦いには不向きな身体で。小柄なのにあまりに強いモノだからヨーダと呼ばれる程にまで……。結婚できたとしても、もしお母さんに貴女のような能力が発現したら命が無いというのにです……。結局貴女のお母さんには能力が発現しなかったわけですが……」

恭子は恵比寿顔の話など耳に入らず、ずっと自分を責めていた。

私は悪魔のような能力を持っているのに、何も出来なかった。これまで何人もの命を奪ってきたのに、父を助ける事が出来なかった。私の能力は相手に直接触れなければ効力を発しない。銃を持った相手になど、全く無意味な能力だ。

恵比寿顔から続けて出た言葉は、それを見透かしたかのようだった。

「次のステップとして、相手に触れる。つまり戦闘訓練をしますか?」

恭子の身体がピクッと動いた。初めて恵比寿顔の言葉に恭子は反応した。

「貴女のお父さんの死を無駄にしないためにも」

その一言は、恭子の何かを変えた。恵比寿顔が見つめる恭子の横顔が、暫くの時を経て、コクリと頷いた。