番組は基本、制作会社が企画を通し、もしくはテレビ局から発注があり、制作をスタートさせる。その現場を担当するのが制作会社のデイレクターだ。例えば南米・ブラジルのアマゾン奥地での取材が決まっても、大抵の場合、テレビ局の人は現場には行かない。現場に行くのは、いつも制作会社のディレクターとカメラマンたちだ。もしくはフリーランスの人たち。

その違いは大きい。自分の人生をどう設計するかによって変わってくるが、テレビ局の年収はきわめて高い。一方、制作会社のそれは、驚くほど低い。一般論である。

テレビ局の人も現場に行くことはあるが稀で、いつも現場の最前線にいるのが制作会社のディレクター。

お金も欲しい。でもワクワクする現場に、いつもいたい。テレビ局の採用試験をことごとく落ちて、制作会社に行き着いた者の負け惜しみと聞こえるかもしれない。でも、現場の最前線にいられて幸せだったと、私は思っている。

テレビ番組制作の仕組みを、制作会社のディレクターという立場から簡単にご紹介する。情報番組などの場合だ。

なにかの番組を制作することが決まったら、ディレクターはまず取材するテーマについて勉強する。インターネットで、専門書で、あるいは大学や博物館その他専門家などさまざまな人たちに話を聞かせていただく。そして誰に取材させてもらうか、どこへ行ってなにを取材するかを決定する。

予算についてはプロデューサーと、番組全体のバランスについては構成作家といわれる人に相談する。構成作家が付かない番組も少なくない。そういうときは一人でうんうんと唸ることになる。

そしていよいよ実際に現場に出向き、撮影する。細かい話をすると、インタビューを撮るにしても、座って話してもらうのか、立って話してもらうのか、はたまた歩きながら話してもらうのか。場所は室内がいいのか、屋外がいいのか、何を背景にするのかなど、判断しなければいけないことがたくさんある。そこが「演出」、工夫のしどころだ。

そして各所で撮影してきた映像素材を、パソコンで編集ソフトを使って編集する。

その後、プロデューサーや構成作家たちと「試写」をする。ディレクターが編集したものをみなで見て、意見交換するのだ。

「番組の冒頭はもっと迫力のある映像から入ったほうが良いんじゃないか」

「この人のインタビューはもっと後半で出したほうが良くないだろうか」

番組を少しでも良くするためにみなで議論するのだ。

そしてディレクターは再び編集し直す。これを何回か繰り返す。

そして映像が完成したら、ナレーション原稿を書き(構成作家が整理してくれることも多い)、テロップの原稿も書き出して整理する。

そして最後にポスプロといわれる作業がある。

ディレクターが編集した映像素材を、最終的にきっちりとまとめる作業だ。いわゆる編集所というところで画質、色のバランスなどを整えて、手間のかかる特殊な加工などをしてもらう。テロップも、本番用のものはここで入れる。

映像が完成したら、音楽をつけて、ナレーションも入れる。

そうして完成、出来上がりだ。

簡単に書いたが、ここまでの作業がいつもいつも難航するのだ。でもそれは「少しでもいいものを作りたい」という、みなのこだわり。みな妥協しない。プロだから当然ではあるけれども、毎回毎回本当に骨の折れる作業である。でもまぁこれが楽しいのだ。その最中には、楽しいなどと思えないが、完成した番組を見ると、いつも嬉しい気持ちになる。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『今日も世界の片隅で~テレビの裏側で30年~』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。