意識した事はなかったけど、確かにその毎日の繰り返しで月日が過ぎ、大人になっている。時の流れ……。目に見えないそれを実感するのは難しい。この女性も妹さんも、そうやって必死で前を向いてきたのだろうか。もし自分だったら、不満ばかり言って過ごしていそうだな、と落胆した。

「自分の基盤をしっかり作れば、いざという時もう一人の自分がちゃんと助けてくれる。怖いのは、間違った判断をしても無関心な他人はそれを間違ってるとは教えてくれない。そしてそれにさえ気づかないでいたら、人は黙って離れていく。最後まで味方でいてくれるのは、自分しかいないから」

里香の、優しくも少し胸を突く言葉は佳奈を冷静に考えさせた。

これまで自分から距離を置いてきたつもりが、実は向こうが離れて行ったのだとしたら?

グループの仲間の入れ替わりも、本当は自分と合わなくて向こうが去って行ったのだとしたら?

友達との時間も、誠意を持って過ごしていたかと聞かれたら、答えられない。あの『つまらない』時間を、実は皆んなの方が一緒にいてくれていたのではないだろうか。

怖くて聞けない……と佳奈は一、二回小さく頭を振った。

深入りして欲しくないくせに、いざ自分が困ったら助けてもらおうなんて虫が良すぎる。最後に助けてくれるのは自分、いや、自分しかいないのだと思い知らされる。

私、いつからそんなずる賢くなってたんだろう……。

佳奈は自分に呆れた。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『ギフト』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。