第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-3 技術と経済

3.いろいろな役割を持つお金の世界

経済というと「お金」から考える人が多いと思います。お金の役割を図表1に示します。お金とはまず、どんな商品とも交換できる万能な価値を持つ交換手段です。お金がなければ商品と商品を直接に交換することになりますが、お金によって商品をお金に交換し、お金を使って他の商品を購入することができます。

お金は商品に共通な価値を持つ信用です。一万円札そのものは紙としては一万円の価値はありませんが、一万円の商品と交換できる信用を持った貨幣として認められているのです。したがって、その信用がなくなったら通貨はただの紙切れになってしまいます。

お金の第二の役割は、貯蓄や貸借の手段です。お金に信用される価値が与えられるとそのお金を貯蓄することができ、また貸し借りできるようになります。貸し借りをした場合には、貸してから一定期間経って返してもらうときには利子をつけて返してもらえるようになります。

誰かが大きな事業をするために資金が必要なときはお金を借りて、一定期間後に返済していくということができるようになります。このようにお金を貯めることで、投資することができるようになります。

お金の貸し借り(融通)や投資が発展したのが金融の世界です。企業は株を発行して資本金を集めます。その株を売買する株式市場ができて、株の購入・売却から利益を上げようとする世界もできてきます。企業が一定期日に支払いをすることを約束した債権も売り買いの対象になります。

一方、国によって異なる通貨の交換レートの変動を見て、各国の株や債券を売り買いするやりとりも生じてきます。資本主義の発達によってこの金融市場が巨大化し、現在(2018年)は物の生産額を示す世界のGDPが約70兆ドルであるのに対し、世界の金融資産が200兆ドルと3倍も大きくなっています。

これは、商品に替えるためのお金をたくさん倉庫に貯め込んでいるようなものですが、お金同士の世界では、借りた資金を別の人に貸して、そのお金をまた別の人に貸してといったように、二重にも三重にも帳簿に記載されて見かけ上、帳簿の金額が積み上がっているものでもあります。しかし、このような仮想的なお金の世界が大きくなって、金融市場での投資や交換レートの変動が、物の生産にも大きく影響するようになっています。したがって、実際の商品の世界を「実物経済」とか「実体経済」と呼ぶのに対し、仮想的なお金の世界は「金融経済」と呼ぶようになっています。

写真を拡大 [図表]お金の役割
※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。