一方、副学校長として、いつも国田に受身の姿勢を取り続けるわけにはいかないと思っていた久船は、村山学校長に今後の合宿研修会について相談することにした。まず、久船は次のように電話で報告をした。

「先生の補正予算により合宿研修会が可能となり、ありがとうございました。また、学生からの希望があった翌日の観光はしないことになりました。ところで来年のことですが、私の考えを申しますと、来年の四期生は入学したらすぐに四月の中旬にでも新入生の合宿研修会をしたら良いかと思いますが、如何でしょうか」

「うん、いいだろう。お前に任すから、国田とうまくやってくれたらいいよ」

「予算を最初から一学年四十人に対して四十万円ぐらい組んでも良いでしょうか」

「いいだろう。任すよ」

こうして、毎年新入生は親睦を目的とした合宿研修会を計画することになった。久船は国田に対して押されっぱなしであったことから、時には先手必勝の気分を味わいたかった。国田に電話を入れた。

「この度の研修会の費用の件については村山学校長の裁断で補正予算を組むことになり、村山学校長は合宿研修会の成功を大いに期待しております。ところで来年からは新入生に対して四月中旬に合宿研修会を予定しようと先程村山学校長と決めましたが、先生は賛成されますよね」

「勿論ですよ」

「その予算は四十万円で次年度から組むことになっておりますのでよろしくお願いします」

「あぁ、そうですか。それは有難いことですね。この度の研修会は三学年同時にするので、大規模ですが、必ず成功してみせますので、先生よろしくお願いします。先生方に感謝しております」

久船は、国田が赴任後、まだ、二カ月しか経っていないため、国田が医師会側に協力する態度を取るのは当然のことと思った。しかし国田はこう続けた。

「先生、この度の合宿研修会には、現地でのご挨拶をお願いします。土曜日の午後三時ごろになりますが、よろしくお願いします」

久船はこのようなことは学校長にまずお願いすべきことと思い困惑した。

「その件は、学校長に相談して決めますから、後日連絡します」と言って電話を切った。

国田は以前、村山学校長からすべてのことは久船副学校長に相談するように言われていたので、その通りにしていたのである。

国田は学校運営を積極的に自分のペースで進めつつあった。なにしろ、学校長、副学校長とも本職は開業医であるから、日・祝日以外は多忙である。二人とも木曜日と土曜日の午後は休診としているので、国田はこの時間帯のみ長時間の相談、打ち合わせ、協議を予定することができることになっている。これから学校行事があるたびにお互いに多忙となるが、現在の国田は一見温和しく振る舞っているだけである。いずれ、わがままな振る舞いになるであろう。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『【文庫改訂版】女帝看護教員』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。