【公企の群馬精神Cと独法平均の比較結果】

(ア)会計収支は独法の方が100床当たりの約0.4億円赤字額が多い

収益収支会計は群馬精神Cが100床当たり0.5億円の黒字に対して、独法平均も約0.3億円の黒字、資本収支会計は群馬精神Cが100床当たり0.7億円の赤字に対して、独法平均も約0.9億円の赤字であった。(添付資料C-2)

両会計を合計した100床当たりの収支は、群馬精神Cが約0.2億円の赤字(265床では約0.4億円の赤字)に対し、独法は約0.6億円の赤字(病床数294床換換算では約1.7億円の赤字)となっており、独法の方が約0.4億円赤字額が多い実績になっている。(表1)

(イ)繰入金も独法の方が100床当たり約0.3億円多い

両会計への繰入金額は、100床当たり群馬精神Cが約3.7億円(265床換算で約9.8億円)に対し、独法は約4.0億円(平均病床数294床換算では約11.8億円)と独法の方が約0.3億円多くなっている。

(ウ)群馬精神Cの独法化による年度負担額は約2.0億円の増加

会計収支に繰入金額を加えた自治体の年度負担額は、100床当たり群馬精神Cが約3.9億円(平均病床数265床換算で約10.2億円)に対し、独法平均は約4.6億円(平均病床数294床換算で約13.5億円)と独法の方が約0.7億円も多いという実績であった。従って、群馬精神Cが独法化して独法と同じ経営実績を残しても自治体負担額は現行の約10.2億円から約12.2億円へと約2.0億円増加するという試算結果であった。

(エ)純粋医業収支も独法の方が赤字額が多い

純粋医業収支を比較すると、100床当たり群馬精神Cが約1.8億円の赤字額に対し、独法平均は約2.7億円の赤字額であり、独法の方が約0.9億円赤字額が多くなっている。実はこの事例についても群馬精神Cの方に問題があることを指摘したい。(表1)

【群馬精神Cの問題点】

主な経営実績は病床利用率が68.4%(独法81.1%)と低く、100床当たりの入院収益も約6.6億円(独法約7.3億円)、外来収益約0.9億円(独法約1.4億円)と少なく、また、100床当たりの職員数も、医師6.2人(独法7.4人)、看護師51.8人(独法64.7人)、全職員80.9人(独法97.7人)と独法よりもかなり少ない職員数となっている。

その結果、収益は低くても100床当たりの職員給与費を約6.7億円(独法約8.5億円)に抑制できて、収益収支は黒字を確保できたという状況になっている。経営収支のバランスを図るという点では努力をしていると言えるが、職員数の削減などで黒字化を目指すのではなく、多くの独法化病院が取り組んだようにまずは病院としての経営方針を十分検討した上で診療体制の充実や病床利用率の向上、入院・外来患者数の確保などに努力する必要があると考えられる。

※本記事は、2021年12月刊行の書籍『公立病院改革』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。