【公企の群馬がんCと独法4病院の比較結果】

(ア)会計収支は独法の方が100床当たり約0.9億円赤字が少なく良好

収益収支会計は群馬がんCが100床当たり約1.9億円の赤字に対して、独法平均は約0.3億円の黒字で、資本収支会計は群馬がんCが1.8億円の赤字に対して、独法平均は約3.1億円の赤字であった。両会計を合計した100床当たりの収支は、群馬がんCが約3.7億円の赤字(314床では約11.5億円の赤字)に対し、独法は約2.8億円の赤字(病床数397床換算で約11.1億円の赤字)と独法の方が約0.9億円赤字額が少なくなっている。なお、純粋医業収支では群馬がんCが約2.4億円の赤字、独法は約2.1億円の赤字と両者に大きな差は見られなかった。

(イ)繰入金は独法の方が100床当たり約2.2億円も多い

両会計への繰入金額は、100床当たりは群馬がんC約4.3億円(病床数314床換算で約13.4億円)に対し、独法平均は約6.5億円(病床数397床換算では約25.9億円)と独法の方が約2.2億円も多くなっている。

(ウ)群馬がんCの独法化による年度負担額は100床当たり約4.4億円の増加

会計収支に繰入金額を加えた自治体の年度負担額は、100床当たり群馬がんCが約7.9億円(病床数314床で約24.9億円)に対し、独法平均は約9.3億円(病床数397床換算では約37.0億円)と独法の方が約1.4億円も多くなっている。従って、もし群馬がんCが独法化して独法平均と同じ経営実績なら、自治体負担額は現行の約24.9億円から約29.3億円に約4.4億円増加するという試算結果となっている。(表1)

【群馬がんCの問題点と独法の優良事例】

(ア)群馬がんCの経営実績の問題点

群馬がんCだけ独法化により年度負担額が増えてしまうのはなぜかと調べてみると、同病院の経営実績に問題が多いという点を指摘できる。経営実績では、病床利用率63.0%(独法77.5%)と低く、入院診療単価も5.9万円(独法7.0万円)と低い。

従って、100床当たりの入院収益は約13.6億円(独法約21.2億円)、外来収益も約13.6億円(独法約17.1億円)と少なく、また、100床当たりの職員数も、医師16.6人(独法平均27.0人)、看護師80.2人(独法93.3人)、全職員132.1人(独法164.3人)と独法平均よりもかなり少ない職員数となっている。

つまり、収益が低いために職員数を少なくし、職員給与費や材料費等の支出を少なくして収支の均衡を図っているという状況になっている。まずは、根本的な問題として診療体制を充実して、十分な患者数を確保し良質な医療を患者に提供して収支の改善に努めていくことが第一に必要な対応策ではないかと思われる。

(イ)独法化の優良事例大阪国際がんセンター

独法病院の中でも大阪国際がんセンターは純粋医業収支において、他のがん病院が全部赤字(公企平均約2.9億円・独法平均約2.1億円の赤字)の中、唯一約1.1億円の黒字となっており、独法の有効性を示す実績となっている。実は同がんセンターは、平成29年に病院移転により施設整備費等に多額の経費を要しており、経営収支の悪化は避けられない中で純粋医業収支で黒字を確保している点が非常に評価できると言える。

※本記事は、2021年12月刊行の書籍『公立病院改革』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。