事例2 自分に気づき始めた矢先、思いがけず終結することになった女性

1.どこかちぐはぐな出会い

この女性は私の本を読み、来談したとのことであった。

面接室に入ると、切れ長の目で部屋の中を観察するようにじっと見まわしたり、私の顔をじっと見つめたり、何か思うところがあるようにも見えた。服装自体は質の良さそうな上下揃いの上着とスカートに真っ白なブラウスで一見きりっとしている。

だが着こなしが、崩れているというほどではないが、どこか無造作に着込んでいるような感じを受けた。

細かいことを気にしないというと聞こえがいいが、良いものを身に着けながら着こなしは雑なのが、どこかアンバランスであった。髪はボブというのだろうか、ショートにして軽快な感じだった。目は切れ長で、目鼻立ちは大きく、大柄で動作も大きいので、人の目を引きやすいように見えた。

母親が自分に対して行ってきた行為は虐待ではないかと来談申し込み表に記入したのだが、いざ面接で口を開こうとすると涙がこぼれ始め、およそ15分か20分ほど、声は出さないがただ泣き続けていた。こちらの〈うん、うん〉という反応や、〈少しずつでも話せますか〉といった問いかけに、ようやくポツリポツリと自分の体験を語り始めた。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『毒親の彼方に』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。