これは、その話にあまり注意が向いていない場合、はじめは単なる音声としてだけ聞こえてから、次の瞬間に(その声と同時に)その話の内容と意味が意識にのぼる、理解されるということで、この間に一瞬の時間的な遅れが生じることがあると思われます。

このときは、本人もそのタイムラグを認識できるはずです。この場合も、刺激が聴覚皮質に到達し、情報処理された時点で聞こえていて、このときは音声としてだけ聞こえたということですが(ただこのとき音声だけといっても、ある程度の処理された情報、例えばそれがBさんの声であることなどはわかっているはずです)、注意がかなり他に向いてしまっているために、内容の理解までには至っていない段階ということです。

このとき注意の度合いにもよりますし、その話を聞く気があるかどうかにもよるとは思いますが、次の瞬間にその意味内容が(音声とともに)急に頭に浮かぶということです。この際、はじめに音声として聞こえ、そのあとで意味内容が頭に浮かぶということで、その間情報は保存されています。これも感覚情報保存、エコイックメモリーの機能と考えられます。

一般に、エコイックメモリーは4秒間以内くらいといわれています。このように、声が聞こえてからその意味がわかるまでのタイムラグが生じる場合というのは、他のことにかなり注意が向いているときなどの特殊な状況と考えられますので、ふだんの生活ではあまりないように思いますが、しいていえば、机に向かって仕事にかなり集中しているようなとき、後ろから誰かに何かを言われて、うるさいなと感じて一瞬無視しようとしたときなどに起きるかもしれません。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『「意識」と「認識」の過程』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。