【前回の記事を読む】保存された聴覚情報が聴こえる?「両耳分離聴課題」について

感覚情報保存に伴う音声の遅れが明らかな状況

誰か(Aさんとします)が何かに非常に集中しているような場合、例えば精密な作業など、間違えたらたいへんなことになってしまうような、かなりの集中度が必要な状況の場合に、たまたま近くにいた同じ職場の人で、Aさんの作業にあまり関係がない人(Bさんとします)が、Aさんに何か話しかけたとします。

この場合、Aさんは、おそらくそのBさんの発言を聞いている余裕などはないでしょうし、その話を聞いて理解する気もないでしょうが、Bさんが何か言ったかな程度の感覚といいますか、何らかの音声としてはそれが聞こえた、耳に入ったとします。

この場合、音声としては聞こえても、その話の内容、意味まではわかっていない、理解していないという状態が一瞬生じると考えられます。

このあとで、Aさんがどれほど自分の行為に集中しているかにもよるのですが、次の瞬間に、その発言の意味するところが急にわかる、頭に浮かんでくるということがあると考えられます。

Aさんの集中の度合いによるというのは、例えばAさんが本当に真剣にほぼ100パーセント作業に注意を集中していて、周囲を完全に無視しようとするような状況であれば、はじめからBさんの声自体がほとんど聞こえていないことになるかもしれませんが、もしも注意の度合いが70パーセントくらいで、少しは周囲の状況を認識できる、話の内容を理解できる程度の余裕があるとすれば、Bさんの発言が音声としてだけ聞こえたその直後に、急にその話の内容の意味が理解される、意味が頭に浮かぶ、という現象が起きることがあると思われます。