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イタリア「世界コーヒー会議」

一九九〇年代、まだ景気が良かったころ、コーヒー豆販売店の全国組織としての「全国UCCバザール会」があり、UCCと五十年以上取引のあったマルセンも、宮城県の役員店として選ばれていた。

当時マルセンは喫茶店も経営しており、小売と合わせて毎月百キロ以上のコーヒー豆を仕入れていた。ある時、バザール会の役員改選となり、克裕は全東北の会長に選出された。

一九九四年、克裕四十四歳の時、UCCコーヒーの主催で、アメリカのスターバックスなどのビジネス視察としてシアトル、ロサンゼルス、サンフランシスコに行った。翌年には、イタリアのベニスで(世界四十四ヵ国が参加の)「世界コーヒー会議」が開催され、克裕は日本の「全国UCCバザール会」代表としてスピーチをすることになる。

その会議も無事終了し、三日目にはミラノの「ドゥオーモ寺院」を視察した。

「ドゥオーモ寺院」は完成までに四百年以上もかかり、八百年前にはすでに造り始められていたそうで、ガイドさんは、「八百年も前に造られてから今日までの間に、世界恐慌、大不況などが、何度となく訪れたにもかかわらず、現在にいたっても、毎月、何百万人の人たちが、ここを訪れているのです」と言った。

克裕はガイドさんに、「どうして、不景気でも毎月何百万人ものお客様が来ているのですか」と尋ねてみた。するとガイドさんは一言。

「本物だからですよ」

このあと克裕は「本物」が人にいかに大きな影響を与えるかを知ることになる。